湾に臨む小高い丘に面したロシアのウラジオストクには2020年2月現在、世界最長のつり橋(斜張橋/しゃちょうきょう)があります。
2012年にウラジオストクのルースキー島で行われたサミットに合わせて急ピッチで架けられた橋ですが、他にも同時期に2つの橋が架けられ、ウラジオストクの交通の要所として役目を果たしています。
サミットの行われたルースキー島はそれまで船でしか行けなかった場所でしたが、橋が架けられたことで島の環境も大きく変わりました。
今回はベイエリアらしさの演出にも一役買っているウラジオストクの新しい名所、3つの橋をご紹介します。
湾に橋が架かるのはウラジオストク長年の夢
ウラジオストクは金角湾と海に面した都市で、金角湾が市街地方面へと入り組んでいます。
金角湾を横断するには湾の周りをぐるりと回って行くしかなく、湾を横断する橋の建設は長年のウラジオストク民の夢でもありました。
ウラジオストクをサンフランシスコのようにするという構想がソ連時代からの夢でもあり、ロシアで初めてサミットが開催されることを契機に夢の実現へと向かっていったのです。
2012年のAPECサミットに向けて急ピッチで橋を建設
2012年にロシアで初となるAPECサミットがウラジオストクのルースキー島で開催されました。
ルースキー島は市街地とつながっていないので島へ行くには船を利用するしかありませんでしたが、サミットに合わせて橋が架けられることになったのです。
サミットに向けて建設された橋はルースキー島への連絡橋のみならず、鷹ノ巣展望台からも見える金角湾に架かる橋とアムール湾を横断する橋の3つ。
3つの橋は建設開始から完成まで 3年ほどの期間しかなく、当初は多くのウラジオストク民が「サミットに橋の建設が間に合わない」と口にしていたそうです。
それまでロシアには海峡の橋の建設の実績もなかった
サミットに建設が間に合わないと言われていたのも、急ピッチで進める必要のある工期だけの問題ではありませんでした。
それまで湾に橋を架ける建設の実績がロシアにはなかったのです。
実績のないことを急ピッチで進める必要があったため、常識的に考える人たちから建設は間に合わないと言われていました。
しかし建設途中で問題が起きながらも見事サミットに橋の建設が間に合い、現在ではウラジオストクの新たな交通の要所として役目を果たし続けています。
橋の建設でよりベイエリアらしく生まれ変わったウラジオストク
サミットをきっかけにウラジオストクにかけられた3つの橋のうち2つの橋は、支柱となるタワーから伸びたワイヤーで橋を吊り上げる斜張橋(しゃちょうきょう)。
それらの斜張橋がウラジオストクをよりベイエリアらしく演出し、交通のアクセスも良くなり街が生まれ変わりました。
ウラジオストクが生まれ変わるきっかけともなった3つの橋をそれぞれ見ていきましょう。
鷹ノ巣展望台からも見えるウラジオストク金角湾の橋
ウラジオストクの市街地に入り組む形の金角湾にかけられた金角湾の橋は、有名な観光名所の鷹の巣展望台から観るのがよいでしょう。
金角湾の橋の近くにはクラースヌイ・ヴィルベル軍艦が係留し、その先にシベリア鉄道の発着地でもあるウラジオストク駅があります。
ニコライ二世凱旋門やC-56潜水艦も橋の近くにあるので、橋に行く際は合わせての観光がおすすめ。
金角湾の橋は世界でも珍しい斜張橋
斜張橋の支柱とも言える主塔は、アルファベットのAのような形状で根本が広がった形で建設されるのが一般的ですが、金角湾の斜張橋は主塔がVの字のような形状になっているので、世界でも珍しい形状の斜張橋となっています。
渡っても良し写真に収めても良しの様になる橋
金角湾の橋のVの形となった天に向かって伸びるかのような主塔は、写真に収めても美しく映えるでしょう。
金角湾の橋が美しく撮影できるおすすめのスポットは、特徴的な主塔をしっかり収めることができる鷹ノ巣展望台。
車での移動が可能な場合は橋を横断すると主塔の高さを身近で見ることができるので、その高さに圧倒されるかもしれません。
ウラジオストクと島を結ぶ2つの橋
出典:Google Map
ウラジオストクとサミットが行われたルースキー島を結ぶのが、2本の支柱間の長さが1,104mと世界最長(2020年2月現在)のルースキー連絡橋です。
東ボスポラス海峡を横断するルースキー島連絡橋
ルースキー島大橋(連絡橋)は東ボスポラス海峡を横断してウラジオストク市街地とルースキー島をつなぐ斜張橋。
ルースキー島大橋が架かることで、それまで船でしか行けなかったルースキー島へのアクセスが車でも行けるようになり便利になりました。
橋を渡ってルースキー島に入るとすぐに極東ロシアで最大規模の大学、極東連邦大学があります。
極東連邦大学は2012年に行われたAPECサミットの跡地に移転した大学で、海外からの留学生の受け入れにも積極的な大学です。
ルースキー島連絡橋の建設で島が大きく発展
ルースキー島大橋がかかることでルースキー島へのアクセスがよくなり、ルースキー島の発展にもつながりました。
もともとルースキー島はウラジオストク民の海水浴場として夏場に人気のスポットでしたが、橋がつながってからは極東連邦大学の移転や別荘のほか、ホテル建設などのリゾート開発などニュータウンが生まれています。
ソ連時代に建設されたヴォロシーロフ砲台もルースキー島にあり、当時の様子を間近で感じられる人気の観光地スポットです。
アムール湾を横断する全長4362mの大橋
出典:Google Map
ウラジオストクに架けられた 3つの橋の最後は、デ・フリーズ半島からアムール湾を抜けてセダンカを結ぶ全長4,362mもの大橋です。
アムール湾の大橋は斜張橋ではなく支柱によってさ支えられている橋で、ロシアでは3番目の長さ(2020年2月現在)。
ウラジオストクに同時期に架けられた 3つの橋で、唯一斜張橋ではない橋でもあります。
橋の建設でウラジオストクがよりおしゃれに変貌
出典:Google Map
世界最長の斜張橋のルースキー島に金角湾の橋、ロシアで3番目の長さのアムール湾横断橋。
これらの橋が架けられたことでウラジオストクの交通の便が一気によくなり、移動時間の大幅な節約にもつながりました。
どの橋も湾の上に架かっているので、ウラジオストクがよりおしゃれな街に見える演出効果もあります。
3つの橋の中で最も定番の橋は金角湾の橋で、鷹ノ巣展望台からの撮影がおすすめ。
橋を背景に海の見えるカラフルな街、ウラジオストクを撮影してみてはいかがでしょうか。